アルトが言うには、祭壇に"全世界の安定を支える神具たる武器がある"らしい。 渚から、強制的に真天界を救えと言われてるが… これからどうなるのか、知ったことでは無い。 今、目の前にあるモノのみ信じる主義なのでな。 今は…祭壇へ続く階段を昇っている。 祭壇らしき物は、見上げても全く見えないが。 渚「あぁ、要は現実主義なのね?」 思っていることが読まれてる…だと? アルト「この者は、伊達に約2000万年生きてるからな。」 我より、云万倍も生きてるのか…。 世の中には、末恐ろしく生きる奴もいるんだな。 リオ「いや…思考を読まれるのはどうでもいいとして…。」 渚「ん、どうかしたの?」 リオ「この階段は、後何段昇ればいいのだ?」 疲れてきて、足が使い物にならなくなってきたぞ…。 アルト「ふむ…凡そ3万段といったところか。」 万単位かよ…この国はどうかしてるぞ…。 祭壇に着く以前の問題で、死ぬかも知れん。 リオ「楽して昇れないのか?」 相当疲れてきたのか、我は簡単に昇れないか聞いてみた。 頼む…簡単に昇る方法…あってくれ!! 渚「何言ってるの、足で昇るに決まってるでしょ。」 なん…だと? アルト「この階段は、強力な術で構成されているからな…簡単には盗まれない様にしてある。」 渚「あ、でも安心していいよ。」 今更何を安心すればいいのだ…。 渚「私達は加速移動してるから。」 加速ねぇ、残り何分で着くのやら。 …せめて、魔力補給はできないのか? リオ「魔力だけでも、回復させてくれ…渚を探したが為に魔力が無い。」 国が大きい所為と、アルトが迷った所為…後は、我が術を使った所為か。 渚「なるほど、じゃぁ魔力の果実をあげるね。」 我は渚の手の上にある果実を躊躇せず、奪い取る様な形で取った。 渚「どんだけ、魔力使ったのよアンタ…。」 アルトが城下町を迷った所為だ…。 我の責任ではない。 我はアルトを睨めつけた。 アルト「……。」 アルトは我の目線に気づいたのか、目どころか身を反らした。 渚「ふ〜ん…あ、着いたみたいだよ?」 早ッ!! 〜祭壇〜 リオ「ふむ…此処が祭壇か…。」 …。 目の前にあるのは、荒れ果てた祭壇。 其の中心に聳えるが如く3本の剣が交わりながら刺さっていた。 後の真ん中に刺さっている剣はドス黒き闇の渦を纏っていた。 いや…黒き闇の渦どころか、その剣の刃すら黒く染まっていた。 3本…? 2本じゃなかったのか? 後は…不思議と浮かんでる玉の様な奇妙な物体か…。 あれは…何なのだろうか。 リオ「2本あるという話を聞いた覚えしか無いのだが…。」 アルト「あぁ、真ん中に刺さってる"ソレ"は太陽歴約7000千年前に余の双剣で封印した魔剣だ。」 リオ「太陽暦? 聞いたことのない年号だな。」 アルト「いずれ力が大きく、高飛車な魔王に会えば理解できるぞ?」 そんな魔王には、会いたくないな…。 アルト「太陽界出身と聞いたこともあるな。」 太陽界…あの様な暑い…というか現実的に考えれば近づいただけでモノが消える所に世界もあるのか…。 まぁ、それはともかく。 魔剣…か。 あの黒き刃の剣の事だろうな。 リオ「我の主属性と何か関係があるのか?」 渚「私の預言した結果によると、キミと"三剣の生まれ子"が必要らしいんだけど…。」 生まれ子? 子が居なければ、この真天界とやらは救えないのか? あの浮かんでる玉から生まれたりとかは…無いよな。 リオ「…少々質問するぞ。」 あの玉が気になるのでな。 アルト「どうした?」 リオ「あの玉は何だ?」 直球で質問してみた。 アルト「ふむ…何だろうな、あの玉は。」 渚「私も分からないのよねぇ…そうだ、お告げをもらおうっ!!」 勝手にしてくれ…。 〜10分後〜 お告げの結果はどうだったんだ? 渚「神様からのお告げによると…あれが"三剣の生まれ子"らしいのよ。」 アルト「なるほどな…ならば、あの玉の様な物を護らなくてはならないのか。」 どの様に、護るのだ? まぁ、玉が少しづつ光ってきてるが…。 アルト「ふむ…どの様に護るかだが…ん?」 アルトも玉の微弱なる輝きに気づいたか。 渚「ふむ…生まれるかな?」 …決定的瞬間か? 渚「生まれた子が女だったら、リオ君は犯罪者。」 …何だソレ。 アルト「いや、阿呆者で十分だろう。」 何だ…その設定は。 …男であってくれ…。 我が弄られる可能性が高いのでな。 弱々そうな光が、一瞬にして一層輝き始めた。 カァァァァ…。 よくありそうな効果音だな…。 …女が生まれたので、この場を去りたい気分だが。 ????「…?」 渚「や、やっほー。」 アルト「ふむ…此の子が"三剣の生まれ子"か。」 ????「み…けん…の…うまれこ?」 リオ「…この子が"三剣の生まれ子"か…天使じゃないか。」 天使といえば、天界に住む住民であり天使のことだ。 昔、親父が"魔界と天界の人々が仲良く暮らせる世界"とやらの為に全身全霊を尽くしてた記憶がある。 まぁ、それにしても…。 リオ「八翼の天使は全く見た覚えは無いな。」 背中から八方向に生えている翼に我は少しながら、見とれていた。 渚「"三剣の生まれ子"の種族は聞いてなかったからねぇ…驚いたよ。」 アルト「さて、この子に服を着させるから腐れ男は後ろでも向いてろ。」 腐れ男ではないッ!! 暇なので、盗み聞きでもするか。 〜渚とアルトと"三剣の生まれ子"〜 渚「八翼の天使…か。」 アルト「八翼の天使は余も、目にしたことは…あるか。」 あるのかよ!! まぁ、我は魔界の人なので天の事については…親父から教わる程度だからな。 天界に関する基礎的な知識しか、此処では通用しないだろう。 渚「あぁ、あの神天使だっけ?」 神天使…。 親父から聞いたことがある。 現在の神天使は大分オカシイらしい。 アルト「ふむ、神天使フォグシエルだな。」 ????「ふぉぐ…しえ…る?」 アルト「あぁ、其の者は"魔界を滅ぼそう"とする輩でな…馬鹿なんだ。」 馬鹿なのか…。 出来れば、関わりたくない相手だな。 何せ、我は魔界の王であるからな…。 親父が天界と魔界に仲介の様な事もしてたな。 其の事を考えると、面倒な天使がいるものだな。 ????「その…えと…。」 渚「ん…どうしたの?」 ????「寒いです…。」 …服を着せずに話し込むなよ…。 アルト「ふむ…これでいいか。」 …。 …。 何で巫女服? これは…突っ込まなくては!! リオ「おい、アルト。」 アルト「なんだ?」 リオ「何で巫女服なんか持ってたんだ。」 というか…何処で手に入れたんだ…コイツ…。 アルト「ヤ○オクで買った。」 すごいな、ヤフ○ク。 リオ「それで…どうするんだ?」 渚「神からのお告げは、確か…。」 魔界の王を真天界に連れて来い。 魔界の王…魔王の魔術の主属性を聞き出せ。 其の主属性が"極光"か"邪"で無い場合、魔界に魔王を帰せ。 魔王の主属性が"極光"か"邪"であった場合、祭壇にある二振の剣の内…主属性に適応した剣を一本託せ。 魔王の主属性が"極光"と"邪"であった場合、祭壇にある二振の剣の内…全てを魔王に託せ。 真天界を救いたくば、"三剣の生まれ子"なる者の出現を待て。 "魔剣マギナ"の制圧は恐ろしく厳しい道になるだろう…。 魔王と"三剣の生まれ子"の二人で、多くの物事を学び成長せよ。 多くの物事を学びたくば、学園を探せ。 其処に"魔剣マギナ"を粉砕する術があるだろう…。 リオ「ふむ…。」 渚「ん…どうしたのリオ君。」 気になった部分があるな…。 リオ「何故、魔剣マギナを粉砕する必要があるのだ?」 粉砕する以前に、封印とかその様な他の方法があるだろう…。 アルト「其の事か…余が説明しよう。」 リオ「お前が?」 アルト「うむ、余は知識が豊富なのだ。」 知識豊富ねぇ…自分の城下町内で迷ってた奴が言うと、違和感がありすぎて困るな。 アルト「余は方向音痴なのだ…。」 リオ「我が思考を読むな。」 皆、思考を読む術を持っているのか…? 世の中、恐ろしい時代なのだな…。 プライバシーが全く無い。 アルト「相手の思考を読むことによって、戦場で役に立つのだよ。」 戦場で使用する術なのか。 せめて、普通に話してるときは…思考を読むのは遠慮させていただきたいな。 アルト「考慮する。」 リオ「考慮する以前に、今からそうしてくれ。」 アルト「承知……ふむ、魔剣マギナの事だっけか?」 無視かよ。 リオ「あぁ…。」 アルト「三剣の一つ、"魔剣マギナ"…全世界を闇に染めかねない"グロウ・ダーク"が付加された剣だ。」 リオ「其の魔剣は、封印とかできないのか?」 アルト「今の現状が封印だ。」 ふむ…祭壇にある二振の剣が魔剣を封印しているのか。 渚「あ、言い忘れてたけど…。」 何だ? リオ「どうしたのだ?」 渚「明日から太陽暦4699年分はリオ君は修行漬けだから。」 なんという自己中心的思考。 リオ「なん…だと?」 渚「ふふんっ♪」 リオ「太陽暦4699年分は、この世界で言えば何年くらいなのだ?」 渚「えっと…一年分で300年だから…1409700年分だね。」 約141万年分って…どれだけ修行すればいいのだ? 渚「それと、封印に使われている邪剣を明日から持ち歩いてもらうよ。」 …? 何故、封印に使用されている祭壇にある二振の剣の一つを抜くのだ? リオ「何故、邪剣を抜かねばならないのだ?」 我の質問に渚は、困った顔をしながら解答した…。 渚「双剣で封印してたとしても、封印時期が100年近くしか延長出来ないからだよ。」 アルトが胸を張っている。 貧乳のくせに。 アルト「安心しろ、聖剣の力の維持は余に任せておけばいい。」 ふむ…。 思考を読んでくれなかったことに感謝しよう。 …具体的な修行方法はどうなのだろうか。 リオ「修行漬けと言ったな。」 渚「うん。」 リオ「具体的に、何をするのだ?」 渚「邪剣の扱い方、制御…術の詠唱速度とか…理術の為に知識量の増加かな。」 我が魔界に居た時と修行方法はほぼ同じの様だ。 邪剣の性能が気になるが。 渚「邪剣は、今からでも抜いていいよ。」 抜いていいのか。 怖いな…。 アルト「余が抜いてこようか?」 そうアルトが言うと、祭壇に向かって歩き始めた。 当然ながら、我も同行する羽目になったが。 〜祭壇〜 ????「俺様が邪剣だぜェ?」 アルト「…毎回言われなくても分かってる、リア。」 リア「お嬢じゃねぇか、早く俺を抜いてくれよ。」 口の悪い剣だな。 リア「そういやァ…3年前に一時的に聖剣が飛んだよなァ。」 あぁ、占い屋もどきの事件の時か。 アルト「あぁ、リオを脅すために一時的に召喚しただけだ。」 脅す為に、封印の媒介である剣を召喚するなよ…。 リア「俺ァ、今日から抜けるぜ聖剣グランさんよォ。」 グラン「ふむ…すこし寂しくなるな。」 リア「テメェが俺様の主人か?若造じゃねェか…大丈夫なのかお嬢よォ。」 良いコンビにすら、なりそうに無い雰囲気だな。 アルト「余に不満があるのか?」 リア「いや不満は無いが…俺様が見る限りでは、主属性が俺様と適応するのか分からねェ。」 我が主属性が邪では無いのか? アルト「ほぉ、リアが魔族の主属性を見破れないとは珍しいな。」 リア「理っつーモンが主属性だな、コイツ。」 理は属性では無いぞ。 此の世のあらゆる知識を集結し、情報の連結、構成を行い具現化させる術だからな。 アルト「ことわり?」 リア「恐らく、俺様から言えば魔術に関する主属性はコイツには存在しない。」 後ろから、渚が何か言ってきた。 渚「つまり、"魔に関する全ての属性に属しない系統"が使える訳だね。」 魔に属しない系統だと? 我がそんな芸当なんぞ、できるのか? リア「いや、そうとは言えない。」 渚「なんでさ。」 リア「そうだなァ…此の若造が"魔に関する全ての属性に属しない系統"を使えたとする。」 仮説か? 邪剣の理論か…悪くないな。 リア「若造は"理"という魔に属せぬ系統を扱える訳だが…。」 渚「うん。」 リア「其の"理"の系統は原理として何を利用して発動する?」 …我に聞いてるのか。 いいだろう、言いたい事を全て言ってやる。 リオ「無論、知識だ。具体的に言えば"此の世のあらゆる知識を集結し、情報の連結、構成を行い具現化させる術"だがな。 特徴として強いて言うならば、完全詠唱術であることだな。 魔術があるだろう? アレとは原理が全く違う。 元々、魔術に似て非となる術だからな。 魔方陣の構成方法は似てる部分がある。 あれは、魔の契約…まぁ、呪文みたいなモノだな。 魔術を放つには、属性と見合った系統でなければならないと聞く。 理術も其れと同じだ。 理の術は、知識の構成…理術を扱う最終段階の前に当たるか…。 簡単に纏めると、構成後に"世界に影響する呪文"が必要な訳だ。 此の詠唱無しに、理術は発動不可能。 過去に詠唱せずに発動していた愚か者がいたが…あの方法では理術の真価が無い。 真価無ければ、理術は価値がない。 そう言えば、最近聞いた話題なのだが…。 我と同じ様に、理術を発動してる輩もいるそうだが…あの知識の構成方法では真たる威力、効力が期待できない。 阿呆者が馬鹿知恵出した所で、我が編み出した至高の術には追いつけないんだよ。 馬鹿がッ!!」 いかん…夢中になりすぎた。 引いてなければ良いが…。 リア「おい若造…最も前者の部分は、前に思ってたことを其のまんま口に出しただけだろ…。」 リオ「否定はしない…というか、思考を読むな…癇に障るものがある。」 此の世界…プライバシーが全く無いな。 困った…。 リア「よく語る若造だなァ…学者さんか何か?」 リオ「魔王だが、何か?」 魔王であり学者だからなぁ…何とも言えんが。 ????「えっと…。」 リア「何だ、餓鬼じゃねぇか。」 "三剣の生まれ子"を餓鬼扱いする剣自体が、どうかしてるだろ…。 ????「名前…欲しいとか…思ってるんですけど。」 名前か…無いと不便だな。 アルト「"セリス・フォン・ウィザード"って言うのはどうだろう。」 ????「セリスですか…良いと思います。」 渚「うんうん、良いと思うよ!!」 異論…無しか。 我が、少し頷きながらセリスを見ていると…封印されている剣が突っ込みを入れてきた。 マギナ「生まれて間の無く話せる時点で、何故疑問を持たないのだ…。」 リア「オメェ、空気読めよ。」 グラン「話せる剣の同士として、空気を読むのは必要なことだぞ。」 マギナ「すまない…。」 さて、邪剣抜いて修行するか。 チャキ…。 …。 …。 簡単に抜けたな…。 リア「あの気の抜けた剣の対処だか知らねェが、頑張ろうじゃねェかって…あぁ?」 セリス「…?」 セリスが邪剣に触れた瞬間…誰もが予想も出来ぬ事態が発生してしまった。 邪剣が消えてしまったのだ。 アルト「…!?」 渚「剣が…消えた?」 この事態に対処する方法があるのか? セリス「私…どうしたら…。」 今は冷静に考えて言うならば…。 リオ「修行方法の方針と、今後の対策を練らなければならない…。」 渚「私…神に連絡取ってみるね。」 すると…神は渚に告げた。 邪剣は"三剣の生まれ子"の体の中にある。 取り出す方法として、一つだけだろう。 "三剣の生まれ子"が自ら剣を抜くしか現に出現させる方法は無い。 …我等神の会議の結果では、太陽暦4699年分の修行を"三剣の生まれ子"もしてもらう事とする。 勿論、魔王の修行を主にしてもらう方向で行って欲しい。 我等神は巫女である貴女に告げることしか出来ない。 貴女達の結果で全世界の運命は別の道を辿るであろう。 渚「…だって。」 リオ「…今から修行するか…。」 幼き少女の中に眠る邪剣。 魔剣の目覚めに恐れる我等…。 運命の歯車は、此処から大きく回り始める…。 第十五章に続く