"真なる天"とは、別世界の事だ。 通常ならば、其処に行くことはできない。 だが、自身に相当な悩みを持つ者のみ進入可能となっている空間だ。 我は幼い時、母親を亡くし、相当困っていた…というか、苦労していたな。 あの頃は…魔王の仕事、魔王に近い力を得るための修行やら…毎日が忙しかった。 今から約5000年前の…ある日の話だ。 〜宮殿〜 リオ「ふぅ…今日も忙しいな。」 母親が亡くなってからというもの、ここ毎日…暇が無い。 就寝時間辺りしか、余裕が無いな。 リオ「おい其処の執事、我に暇を寄こせ。」 この台詞は毎日吐いている言葉だ。 毎回断られてしまうのだが。 執事「リオ様は、もう689歳です。もう少し、国の事を心配してください。」 年齢と国は関係無いだろう…。 何を言い出すのだこの執事は。 リオ「…しかしだな、我は流石に忙しすぎて倒れてしまうぞ。」 執事「仕方ないですね…1時間だけ、暇をあげましょう。」 よし、よくやったぞ自分!! やっと休める…。 リオ「下の街に行ってくる。」 少しは腹ごしらえしたいのでな。 腹が減っては仕事は出来ない。 執事「お待ち下さい、この剣を腰に…。」 そう言われ、渡されたのは護身用の剣だ。 外は何があるか分からないからな…自身は己で守れなくては。 リオ「…では、行ってくる。」 〜城下町〜 城門を通り、城下町を見渡してみる。 リオ「ふむ…城下町とは結構盛り上がっている所なのだな。」 辺りを見渡せば、店が沢山並んでいる。 オッサン「リオじゃねぇか!元気にしてたか?」 八百屋のオッサンか…。 このオッサンは魔界の王様に対しての対応が…まぁ、いいか。 リオ「ふむ、最近は仕事で忙しくてな…元気では無いぞ。」 オッサン「お前さんの兄貴には頼まねぇのか?」 兄貴は自由気ままだからな…仕事をやってくれるか分からないな。 リオ「頼む以前の問題で、魔王の仕事なので我が処理している。」 オッサン「そうか…あぁ、そう言えば…。」 リオ「どうしたのだ?」 オッサン「最近になってな…俺様の店ン前に変な店っつーか…占い屋ができたんだ。」 占い屋? 世の中、論理的に考えないと生きていけない我には関係の無い話だが。 魔王として民の悩み、意見はキチンと聞いてやらないとな。 特に、このオッサンは"聞け!!"としつこく言ってくるから要注意しないと…。 説教されてしまう。 リオ「…で、その占い屋が如何したというのだ。」 オッサン「どうしたの何も、怪しそうじゃねぇか。」 怪しいから何だというのだ…。 調べてこいとでも言われそうで怖いな。 リオ「…其れを理由に、我に調べてこいと?」 オッサン「そうゆうこった。」 …腹が減ってるんだよな。 リオ「腹が減って、仕事ができん…。」 オッサン「そうか、なら俺特製の弁当でも食うか?」 長年世話になってるが、このオッサンは良い人だ。 リオ「そうだな…弁当食ったら調査しに行くか。」 オッサン「気をつけろよ…巷にゃぁ嫌な噂しか聞かないからな。」 嫌な噂ねぇ…どんな噂なのだろうか。 リオ「どのような噂がされているんだ?」 とりあえず、聞いてみることにする。 オッサン「一種類しか嫌な噂は聞かないんだけどよ…"客があの占い屋に入ったら、出てきた事が無い"らしい。」 らしいのかよ!! リオ「目の前に占い屋があるのなら、"らしい"はオカシイだろ…。」 オッサン「俺は営業に夢中になっちまうから、他の店とかを凝視したりはしねぇな。」 業務中は仕方ないとして…昼等の休憩時間はどうなんだ…。 リオ「おいオッサン、休憩時間は何をしているんだ?」 オッサン「あぁ、煙草吹かしてたり寝てたりしてるな。」 …我の調査は必須って訳か。 リオ「我は、どのような調査をすればいいのだ?」 オッサン「そうだなぁ…占い屋が何をしているのか調査してくれ。」 そんな簡単な調査でいいのか…オッサンよ。 リオ「ふむ…では行ってくるぞ。」 オッサン「気をつけてなー。」 リオ「心配は無用だ。」 〜占い屋前〜 7歩で着いてしまった…。 さて、ノックでもするか。 コン…コンコン。 ????「どうぞ〜。」 どうやら中にいる奴は女性らしい。 我は扉を開け、占い屋の中へと入っていく。 〜占い屋内〜 ????「貴方が、この国の魔王さん?」 …我に用でもあるのだろうか。 リオ「すまない、先に我から質問させてくれ。」 ????「どうぞ?」 話がスムーズに進むのは良いことだ、あのオッサンはキレると制御不能だからな…。 リオ「先ほど街の商人から苦情があってな…この店は何なのか調査しろと言われて来た。」 ????「なるほど。」 謎の女性はクスクスと笑いながら、こちらの様子を覗っている様だ。 リオ「答えてくれたら助かる。」 ????「そうねェ…この店は真天界への入り口さ。」 …何だそれ、急展開すぎて分からないぞ。 ????「私は、その世界の姫…。」 …姫? そんなお偉いさんが、この魔界に何の用なのだ…。 リオ「その…姫様が、この国に何の用があるのだ?」 ????「まぁ、そう焦らずに…自己紹介でもしようじゃないか。」 ふむ、名前を知らなければ不便だからな。 一理ある。 ????「余の名は"アルト・ヴィ・ファグナ"。聖剣使いさ。」 聖剣か…中々の熟練者かもしれん。 リオ「我が名は…。」 アルト「"リオ・ヘスティミア"だろう?」 …!! こいつ、マジで何者なんだ…。 アルト「余のために、付いてきてもらうぞ。」 …逃げるが勝ちだな。 …一歩…二歩と後ろにゆっくり進む。 アルト「ほぉ…余から逃げられるとでも?」 アルト「来い!!余の聖剣!!グレン・ガリバー・ド・エクスカリバー!!」 …チッ、バレたか。 アルト「貴様は我が世界の救世主なのだ、来て貰うぞ。」 何故、そちらの世界に行かなければならないのか。 さっぱり分からん。 リオ「何故だ?」 アルト「巫女様の伝言なのだ、近々に余の世界は崩壊を迎えてしまうと聞いたのでな。」 巫女…巫女ねぇ…。 そんな胡散臭い話なんぞ、聞く耳も持たぬわ。 リオ「…で?我に何をさせたいのだ?」 アルト「余と一心となりて、力を貸してほしいだけだ。」 なるほどな…。 ならば、手を貸してやろう。 リオ「ふむ…少しばかり待っていろ。」 アルト「?」 我は服に入っている魔電話で親父に電話をかけた。 テゥルルルルルルルル…ガチャ。 …人間界の科学と魔術の結晶って感じがするな…この道具。 レスティーア「何だ?」 リオ「我だ、今から暫しの間だが旅に出る。」 レスティーア「急だな。」 リオ「まぁな、その間だが親父が魔王として政治を治めてくれないか?」 レスティーア「…ふ、いいだろう。」 リオ「じゃぁな。」 レスティーア「気をつけて行けよ。」 リオ「分かってる。」 ガチャ…ツーツーツー…。 アルト「…来るのか?」 少し心配そうな顔をして我に訊ねてきた。 リオ「安心しろ、アルトの世界を共に救ってみせる。」 アルト「ふ…若造がよく言うわ。」 ババアめ…。 いつか覚えてやがれ。 リオ「…さぁ、行こうか。」 アルト「そうだな。」 第十三章に続く