成るのか 小沢一郎の復権 その成否が決めるこの国の命運

このデタラメ政治情勢を見て国民の中にそれを望む声が次第に強まってきているようだが 果たしてそれは可能なのか


--8月末、菅首相は辞めるのか、辞めないのか、辞めない場合はどんな事態になるのか、こんなバカげた政争の間にこの国は一体どうなるのか。

千年に一度の国難に直面しているからなのか、「小沢一郎 待望論」がガ然 高まっている。
「次の総理大臣には誰がふさわしいと思うか」――というNHKの世論調査で小沢一郎は3位だった。読売新聞の「次の民主党代表には誰がふさわしいか」でも3位につけた。
これまでも「YAHOO! みんなの政治」の調査で「首相にふさわしい政治家」の1位に選ばれるなど、ネット調査では以前から小沢支持が高かったが、「小沢嫌い」の大マスコミの調査でも次々に上位に顔を出しはじめているのだ。
小沢元代表は、10月にも初公判が開かれる「刑事被告人」だ。民主党からは「党員資格停止」の処分を受けた。大新聞テレビは 「小沢は終わった」とうれしそうに報じていたものだ
なのに 国民の間で「小沢待望論」が強まっているのである。いったい どういうことなのか。
「国民がいまの政治にウンザリしている裏返しです。大震災の復旧復興も原発事故の収束も一向に進まない。退陣表明した菅首相が辞めるのか、辞めないのかもハッキリしない。本来なら政治が強いリーダーシップを発揮しなくてはいけないのに、なにも決まらない政治がダラダラとつづいている。これでは国民も嫌気が差すのは当然です。国民は強いリーダーを切望しているのだと思う。いま政界を見渡して“決断力”と“実行力”を備えている政治家は小沢一郎しかいない。国民は『この難局を乗り越えられるのは小沢だけだ』と感じはじめているのでしょう」(政治評論家 本澤二郎氏)

◆「小沢無罪」が確定的になり、流れは変わった。

「小沢待望論」が高まっているもうひとつの理由は「小沢裁判」の情勢が大きく変化しはじめたことだ。
検察のリークを垂れ流してきた大手メディアは、小沢一郎を“犯罪者扱い”し、感情的なバッシングをつづけてきた。
ところが 小沢無罪 が確定的になった。シロウトの集まりである検察審査会は、逮捕された小沢の秘書の「供述調書」を根拠に、小沢元代表を「強制起訴 」したが、東京地裁が「威圧的な取り調べや違法な誘導があった」と調書の大部分を不採用としたのだ。小沢起訴の根拠が消えてなくなってしまったのである。
小沢元代表は無罪が確定するまで復権は難しいとみられてきた。刑事被告人という立場がネックだった。しかし、あと半年もすれば、最大の障害がクリアされる。
もともと小沢起訴はムチャクチャだったが、無罪の可能性が強まったことで、さらに国民の「小沢待望論」が高まったのだろう。
小沢本人も「復権」に動きはじめている。
「小沢さんは、7月中旬に参院議員と会食した時、『2大政党制を実現することが自分の最大の使命だと思っていた。引き際かと思ったが、もうひと踏ん張りしないといけない』と 復権に意欲を見せています。小沢グループの若手とも連日、会合を重ねている。小沢周辺は“ポスト菅”選びで一気に“小沢復権”を果たすつもりです」(民主党関係者)
小沢一郎が国民の期待に応えて「復権」すれば、日本の政治は大きく変わる。滞っていた政治課題も動き出すはずだ。

◆秋に「不信任案」可決で政界は流動化

しかし、小沢一郎の復権は本当に可能なのか。
最大の問題は菅首相が“予定通り”に国会会期末の8月末までに辞めるかどうかだ。もし、素直に退陣すれば、いよいよ、小沢一郎は表舞台に出てくる。党員資格停止が解除されない限り、本人は代表にはなれないが、「ポスト菅」には小沢グループが推す候補者が選ばれる可能性が断然、高い。
しかし、権力欲の塊である菅首相がそう簡単に辞めるのか。たとえ「退陣3条件」が実現しても、絶対に辞めないはずだ。
国連の潘基文事務総長によると、菅首相は9月22日にニューヨークで行われる国連総会で「基調講演」することに強い意欲を持っているという。首相と2回直接やりとりしたそうだ。
フザケたことに、首相側近は「国連総会に出席して“脱原発政策”で支持されれば退陣論は消える」と計算しているという。
スッカラ菅は どんなに批判を浴びようが9月以降も居座りつづけるハラだ。
果たして、その時、小沢一郎はどう動くのか。秋に政局の最大の山場が訪れる。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。
「菅首相が9月以降も居座ったら、自民党は必ず秋の臨時国会で内閣不信任案を提出してきます。そうなったら、小沢グループは不信任案に賛成するはずです。不信任案が可決されたら、菅首相は解散に打って出てくる可能性がある。その時は、鳩山グループと『小鳩新党』を結成すると思う。政界は再編含みで流動化していくでしょう」
もし、自民党が不信任案を提出しない場合は、小沢グループ100人で提出するつもりだ。

◆もう一度本物の 民主党 を立ち上げる

つい最近まで、小沢一郎は民主党を割るつもりはなかったという。
せっかく政権交代可能な2大政党に育てたのだから、最後まで大切にするつもりだったようだ。
実際「反小沢一派」が頭を下げ、小沢一郎を幹事長などに「復権」させれば、問題はすべて解決する。
衆院300人の巨大政党はたちまち動きはじめるだろう。
首相の側近で小沢一郎に「党員資格停止」の処分を下した土肥隆一議員までが 「いまの民主党をまとめ上げ、挙党一致態勢を築けるのは剛腕の小沢氏以外にいない」と悔やんでいるくらいである。前出の鈴木哲夫氏がこう言う。
「たしかに民主党をまとめ、日本の政治を機能させるには、小沢一郎を民主党の代表にして、首相に就けるのが一番いいでしょう。裁判も無罪が確定的です。しかし、党内の路線対立は、もはやそんな状況ではない。反小沢一派が09年マニフェストを次々に否定していることに、小沢一郎は激怒している。記者会見でも『100%は現実的に無理だが 約束した以上は最大限の努力をする姿が貴い』と語っています。とくに増税路線を突っ走る執行部には呆れている。とても一緒に選挙を戦える状況ではない。本人はもう一度『民主党』を立ち上げるつもりでしょう」
果たして小沢一郎の 復権 は成るのか。スッカラ菅首相は8月に辞めるのか。その2つがどうなるのかが、この国の命運を決めることになる。

(日刊ゲンダイ 8/9)