命の谷 vol.6 ウサギの明日






生と死の境界線がよくわからないんだ。
彼は死んだ。彼女は生きていて、彼らは生きかえった。
僕は・・・?


彼はたしかに死んだよ。僕に生をねがって死んだ。
だけど僕だって、彼に生きていてほしかったんだ。
だから神さまにたくさんたくさんお願いしたよ。
彼がまたこのうつくしい世界にもどってこられますようにって。
でもだめだった。
神さまにはささげものが必要なんだよ。きらきら光るいのちが。

いのちはいのちで償えないのかな。
このいのちに何の価値もないなら、僕たちはなんのために生まれたんだろう。

彼のいない世界で生きつづけることはとても悲しくて苦しいことだとおもうんだ。
だからといって代わりのだれかをみつけるとか、死をえらぶとか、そんなことはしないよ。
彼の望みは僕が笑顔で生きること。

だから生きていくよ。
たとえ嘘の笑顔でも。ほんとうに信じれば本物になるんだもの。

いつかおとずれる僕の死そのときまで、僕はいっしょうけんめい笑って君が生きていたことをつたえつづけるよ。
君と生きた日を世界のきおくに残していくよ。
それが僕の生きる理由、存在証明になるから。


ひとりで生きることに何の意味もないけど、そばにはいつも君を感じているから。
僕は君と一緒に生きるよ。






だから。
ねえ神さま、この大地の揺れを止めるには何をささげたらいいのかな。
あのヒトの願いなんて、おねがい、叶えないで。



























ADONIS Gravitiyトップ