命の谷 vol.4 キツネの話






俺が永遠になるときが来た!
誰かのために死ぬなんてまっぴらごめんさ。
老いる前に殺される前に、俺が俺を殺し、生まれ、そしてまた殺す。
これこそ永遠!永遠の命!

おいチビウサギ。俺さまがお前に面白い話をしてやろうか。
丘の上のヤギどもの中に、嫌われ者の老いぼれ爺さんがいただろ。
俺はもちろんあんなヨボヨボになんかならないさ。永遠に若いんだからな!
その爺さん、仲間のためだと信じてこの谷に来たらしい。
笑えるやつだぜ。

丘のやつらは誰も命の谷を信じちゃいないさ。
今頃は、いい厄介払いができたと喜んでるころだろうな。
あの老いぼれは何かにつけちゃすぐ”運命”を口にして、本当のことの一つもみえちゃいない。
本当のこととはつまりこの命の谷の力、そして俺の永遠の命のことさ。
ここで生きてるやつら皆、爺さんが死んでせいせいしてるぜ。

生きてるやつらはいつか死ぬ。
だが俺は死なない。
この谷はまやかしだって?
それこそまやかしさ。

俺は知ってるんだ。
谷の底には女神がいる。
俺は会ったんだ。
あの嵐の日、谷底から眩しい光が溢れてきて、その中に女神を見た。
そして女神は言ったんだ。
お前の願いを叶えてやる、私を見ることができる徳のあるお前の願いを叶えてやる、とさ。

俺の望みは永遠の命!
大地が死んでも俺は生きるんだ!
あばよチビウサギ、いい死を!

























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